一方で、eスポーツ選手の失言がしばしば話題になる。2022年2月には、女性プロゲーマーが「(男性は身長)170cmないと人権ないんで」などと発言し大炎上。その後の対応も問題となり、所属チームから契約を解除された。
5月2日には人気プロ選手のSaRa氏(20)が、他選手のゲーム配信中に「なんでそこでクリアリングすんの? 障害者やろマジで」と発言し、翌日には所属事務所が12月末までの活動停止処分を発表した。
なぜこのような問題が頻発するのだろう。こうなると「eスポーツ選手はマナーも常識もなっていない未熟な人たちだ」という印象になるのも無理はない。業界の人たちはどう考えているのか。eスポーツ大会を運営する株式会社DEPORTAR(デポルターレ)代表の山田浩徳氏と取締役の竹谷彰人氏に話を聞いた。
竹谷氏は「社会生活を営むにあたり、誰かを不快にする言動を取らないことは、eスポーツに限らず当たり前のマナーです」と言い切る。
山田氏は業界の問題点をこう語る。「プロのスポーツ選手なら、明確にプロとアマの差があります。実力も違いますし、選手登録などが必要な場合も多いでしょう。でもeスポーツは東京でトップリーグにいればプロなのか、1円でも収入があればプロなのか。その定義が曖昧なんです。プロ選手としての意識が欠如している人もいると思います」
ふたりとも、炎上した失言に対して厳しい意見だ。eスポーツ選手の肩書きに登録も必要なく「自称」でいいなら、無法地帯だ。失言が連発するのも無理はない。ところが実際はそこまで無秩序でもないという。
「今回、SaRa選手が登録していたeスポーツチームを運営している株式会社REJECTは、eスポーツ界ではかなりの大手です。過去に資金調達を何度かしていて、高額の出資を受けています。当然、スポンサーに対する責任もありますから、選手の指導はしっかりしていたはずです」(山田氏)
確かに、今回SaRa選手は即日Twitterで謝罪しており、会社の対応も早かった。“失言”以外の失策は見当たらない。ではなぜ失言は起きたのか。
「一般のスポーツだと、練習と公式の試合でまったく意識が違うと思います。でもeスポーツは、そこの境目が難しい。普段とまったく同じ環境で、趣味のプレイなのか大会なのかという違いになるんです。使い分けがいっそう難しいかもしれません。
また誰でも、身内で遊んでいるときには、多少乱暴な言葉遣いをすることもあるでしょう。僕も、ひとりでプレイしているときは、人に聞かせられない暴言を吐くことがあります。でもeスポーツは、そうした白熱したプレイを配信するところに難しさがあります」(山田氏)
「野球やサッカーといったスポーツ選手でも、プレイ中に言葉が荒々しくなることはあるのではないかと思います。でもそれは配信されないから問題になりにくい。プレイ中の言葉をすべて拾って公開されるeスポーツのプレイヤーは、ひときわ自制心とマナーが求められるんです」(竹谷氏)
eスポーツ選手が活躍する年代は15歳?25歳くらいという。他のスポーツと比べてもピークは早く短い。そうした若者に真剣勝負の最中にまで徹底したリテラシーが求められることになる。でも、たとえ配信中でなく仲間内でも、「障害者やろ」のような暴言が使われているのは問題ではないのだろうか?
「ゲーム用語としてのスラングは数多くありますから、意味を考えずに使っていた可能性はあります。もちろん、だからといって差別が許されるということではありません。eスポーツ選手に限らず、差別をする人はいます。でも僕自身も、子どもの頃に差別についてしっかりと習った経験はないんです。僕は社会的にもっと差別教育が必要だなと考えているんです」(山田)
つまり、「eスポーツ選手だから」暴言を吐いたわけではなく、社会にあふれる差別的な視線を映す鏡として、今回の件が起きてしまったとも言える。
筆者はブラインドライターズという、何らかの障害があるスタッフで構成された会社を経営している。会社の説明をしたとき「健常者に会社を管理させた方がいい」「障害者は結婚できるのか」といった無邪気な差別発言を受けることは珍しくない。差別発言が問題なのは、そこに潜む差別意識があるからだろう。発言だけを抑止したところで、差別があるなら問題解決にはならない。言葉狩りをすることよりも、むしろ無意識の優生思想のほうが問題だと感じている。
※以下リンク先で
女子SPA2022.05.07
https://joshi-spa.jp/1158914
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Source: 芸能トピ