今作は、17歳の女子高校生・岩戸鈴芽が災いの元となる扉を閉める「閉じ師」の青年・宗像草太と出会い、日本各地に出現した扉を閉めるために愛媛、神戸、宮城などの廃墟を巡るロードムービー。鈴芽を原菜乃華、草太をSixTONESの松村北斗が演じ、深津絵里、染谷将太、伊藤沙莉、神木隆之介ら豪華キャストが脇を固め、声優陣の演技が早くも高評価されている。
ネット上では「想像を超える映像美に度肝を抜かれ、繊細な心理表現で後半にありえんくらい号泣してしまった」「ボリュームあるのにスピード感があって飽きさせないので面白い」「ストーリーと登場人物に深みがあって、観るたびに感想が変わりそう」などと絶賛コメントが多く寄せられている。
だが、その一方で物議を醸しているのも事実だ。今作で多くの新海作品ファンが驚いたのが、現実の東日本大震災を真っ向から取り上げたことだった。主人公の鈴芽は震災で母親を亡くした孤児で、母親の死と向き合うことが大きなテーマとなっているためだ。『君の名は。』では、大規模災害を「彗星の落下」として描くなど間接的なモチーフにしていたが、今作でははっきりと「3・11」のイメージが重要な要素として随所に提示され、緊急地震速報のアラーム音に近い警報音も挿入される。
上映前の先月22日には、作品の公式Twitterが「『すずめの戸締まり』ご鑑賞予定の皆様へ」と題し、「本作には、地震描写および、緊急地震速報を受信した際の警報音が流れるシーンがございます。警報音は実際のものとは異なりますが、ご鑑賞にあたりましては、予めご了承いただきます様、お願い申し上げます」と異例の注意喚起をしていた。
しかし、震災描写があると知らなかったり、そこまで直接的な描写だと思わずに観賞した人も多かったもよう。その結果として、SNS上で「作画が綺麗だから悪い方向に震災描写の迫力があって、かなりの人数が途中退席してた」「被災経験のある人はフラッシュバックする可能性あると思う」「作中の東日本大震災の描写がマジできついです。当時テレビのニュースを見て気分が落ち込んだ人はやめておいた方がいい」といった声が飛び交う事態となった。
映画通で知られるグラビアアイドルでYouTuberのRaMuも、「設定、ストーリーはすごくいい」「感動して泣いた」とした上で、自身のTwitterで「3.11という文字を出してファンタジーに仕上げるのは正直賞賛できなかった。実際私は親戚が福島や山形に多く、完全なる当事者でない私も当時のトラウマが蘇るし、地震への怒りの矛先がこの映画になってしまった。そんな映画。視聴には十分注意が必要です」(現在は削除)と苦言を呈した。
今作の世界では、巨大地震の元凶はプレートのひずみなどではなく「ミミズ」となっており、現実的な震災描写がありながら地震そのものをファンタジーとして描いたことに思うところがある人も少なくないようだ。映像美や脚本、声優陣の演技の評価はおおむね高いものの、震災描写の是非で賛否が起きている状況といえる。
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Source: 芸能トピ