【写真】激震の体操女子日本代表メンバー…最年少は16歳
やるなら正々堂々と「処分」すればいい。それなのに「辞退」を選んだ日本体操協会の姿には「保身」という2文字が浮かんで見えた。
宮田選手が飲酒と喫煙の発覚でパリ五輪出場辞退となった。問題を巡る日本体操協会の対応だが、記者会見をして事実関係を公表したところまでは「適切だった」と思う。この件については協会に内部通報がなされているようなので、協会側がこれを無視してそのまま宮田選手を五輪に出場させた場合には、その後に通報内容が週刊誌などに持ち込まれ、五輪期間中に深刻な騒ぎになった恐れが考えられる。
こうした事態を避け、ダメージを最小限に留める意図が、協会側の対応にはあったのだろう。そして、会見の中で協会は宮田選手本人から聴取し、日本オリンピック委員会(JOC)「国際総合競技大会派遣規程」や日本体操協会「日本代表選手・役員の行動規範」に反していると判断したことを明かした。
ただ、問題はこの先だ。調査によって飲酒・喫煙は確認できたのだから、これを重大な倫理違反と考えるなら、協会なりJOCが宮田選手を正式に「処分」すればよかったはずだ。不祥事があった場合の「罰」についてJOCの日本代表選手派遣規程には「選手等の認定の取り消し」、日本体操協会の倫理規定には「永久追放」「登録抹消」などが定められているので、これを適用すれば「オリンピックに出場させない」という「処分」は理屈の上ではできたはずだ。
しかしながら、日本体操協会もJOCも「処分」は行っていない。同協会は会見でこのように説明している。
「(宮田選手と体操協会の)どちらがどうこうということではなく、対話をしながら『辞退』ということになった」
協会側は、これは「処分」ではなく、あくまで宮田選手も同意した「辞退」だと説明しているのだ。では、なぜ「処分」ではなく「辞退」なのか。その理由について、私はこう思っている。
正式な処分として、飲酒・喫煙という「罪」に五輪不出場という「罰」を下すことは、法律上「無効」と判断される恐れがあったからではないか。
どんな「罰」も、その重さは「罪」の中身とバランスを取る必要がある。このことは刑事裁判では「罪刑均衡の原則」と呼ばれて尊重されているし、会社人事の懲戒処分でも重すぎる場合は裁判で無効となる。どんな違法行為も法に反している以上は許されないことなのだが、だからといってその全てを「極刑」にしてよいわけではない。
今回の件でいえば、20歳未満の飲酒・喫煙は法律で禁じられているので「違法」だが、罰則はないので「犯罪」ではない。これに対する協会の処分は「戒告」や「指導」なら問題ないだろうが、「五輪出場の機会を奪う」という重い対応を正式な「処分」として行った場合、裁判などで争われたら「重すぎる」として効力を否定される可能性も考えられる。
一方で、宮田選手をそのまま五輪に出場させると、世論やスポンサーの厳しい批判を同協会が浴びてしまう危惧があった。
そこでこの場を切り抜けるために考え出された方法が、「白黒つける『処分』ではなく、自発的な『辞退』という形をとって、とにかく宮田選手の姿を五輪からなくすこと」だったのではないか。そして、内部通報に動揺する19歳の宮田選手を大人たちが、『辞退』の線で説得をすることは難しくなかっただろう。
次ページは:宮田が記者会見をして「反省」「出場」で良かったのでは
7/21(日) 9:20配信
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元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士が指摘
西脇亨輔弁護士
https://news.yahoo.co.jp/articles/e3d31aa0ec49515b25d65f07c7119ae5bca4bff5
https://encount.press/wp-content/uploads/2024/07/20161907/675aac246b00efd794ef5848515d74ca-650×433.jpg
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Source: 芸能トピ