フジテレビは秋の改編で金曜午後9時にドラマ枠を新設し、第1弾としてムロツヨシの主演で平手友梨奈がヒロインを務める『うちの弁護士は手がかかる』を放送。しかし、平均世帯視聴率は初回が6.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と厳しいスタートとなり、その後も6~7%前後で低調なままだ。
最も誤算だったのは伝統ある「月9」枠の低迷で、二宮和也、大沢たかお、中谷美紀のトリプル主演という豪華な布陣で臨んだ『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』が大コケ状態に。初回は7.8%でスタートしたが、第2話でいきなり5%台にまで落ち込み、11月に入ってからは4%台になってしまった。このままの水準だと、全話平均で7月期の『真夏のシンデレラ』が記録した「月9史上ワースト視聴率」を更新してしまいそうだ。
橋本環奈が主演する『トクメイ!警視庁特別会計係』や、多部未華子、松下洸平、今田美桜、神尾楓珠による「クアトロ主演」が放送前から話題になった『いちばんすきな花』も視聴率は振るわず、5%前後をうろうろしている状況。人気コミックを実写化した『パリピ孔明』に至っては、3%台という深夜ドラマレベルの視聴率を叩き出してしまっている。
ドラマ枠を増やしたこともあってフジの苦戦が目立つが、実は全体的に低調で「覇権ドラマなし」という状態だ。今期のドラマでは鈴木亮平が主演するTBS系日曜劇場『下剋上球児』が好調な部類に入るが、19日に放送された第6話までの通算平均世帯視聴率は9.68%で10%を割り込んでいる。今期で平均2ケタを維持しているのはテレビ朝日系の長寿シリーズ『相棒 season22』だけで、実質的に勝者がなく「総負け」の状況なのだ。
こうしたドラマ不振の原因としては、各局が深夜帯を含めてドラマ枠を急激に増やしたことが影響しているとの指摘がある。現代ではテレビが「娯楽の王様」ではなくなり、SNSやネット配信サービスなどに時間を割いている人が多く、ドラマが増えれば必然的に限られたパイの奪い合いになって全体的に数字が落ち込む。
なぜ飽和状態になってしまったのかといえば、斜陽産業となりかけているテレビ局にとってドラマが大きな希望となっているからだ。最近のテレビ局は配信事業に力を入れているが、2023年1~3月期の「TVer」の総合番組再生数ランキングでは上位9位が連ドラが占められており、バラエティよりも圧倒的に再生数を稼いでいる。実際、苦戦中のフジテレビでも『いちばんすきな花』は配信で比較的好調だ。
さらに、ドラマはDVD販売や再放送といった二次的利用がやりやすく、ヒットすれば映画化で大きな放送外収入が見込める。Netflixなどのネット配信サービスを通じて、世界進出を目指すことも可能だ。また、近年のバラエティはコンプライアンス強化で規制が強まり、スポンサーが集まりにくいこともあり、バラエティを減らしてドラマを増やそうという方向に大きく傾いたようだ。
しかし、考えることはどの局も同じ。各局がこぞってドラマを増やした結果、飽和状態になって「総負け」という最悪の事態になっているのではと指摘されている。視聴率だけでなく、配信においてもドラマが増えすぎれば限られたパイの奪い合いになり、結果的に共倒れになりかねない。
とはいえ、今年最大のヒットドラマとなった『VIVANT』(TBS系)のようにコンテンツとして魅力があれば、ドラマが増えようとテレビ離れが進もうと視聴者から支持を得ることはできる。今後、視聴者のドラマ離れをどのように食い止めていくのか、テレビ業界の大きな課題となりそうだ。
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Source: 芸能トピ