『ヤラセと情熱』は、1970年代後半から80年代にかけて放送された、世界を股にかけて未知の生物や未踏の秘境を求めたテレビ番組『水曜スペシャル「川口浩探検隊」』について、同番組の大ファンだったというプチ鹿島が、
膨大な資料の読み込みと関係者への取材によってその内実に迫ったノンフィクションだ。「双頭の巨大怪蛇ゴーグ」や「原始猿人バーゴン」といった謎の生物を捜索した同番組は、多くの視聴者から「ヤラセ」だと謗られながらも大人気を博した。
時には「原始猿人バーゴン」の捕獲に成功する(!)など、その演出が過剰になることもあったが、しかし撮影現場はより過酷を極めているケースもあり、単なる「ヤラセ」として一笑に付すことのできない「テレビの本質」がそこにはある。
著者のプチ鹿島が、ファシリテーターとして朝日新聞『withnews』創刊編集長の奥山晶二郎氏、ゲストとして元探検隊員の小山均氏を迎えて行ったトークイベントの模様をレポートする。
今なお残る「川口浩探検隊」への葛藤
プチ鹿島
奥山晶二郎(以下、奥山):『ヤラセと情熱』を読んで感銘を受け、今日のイベントを企画しました。豪華すぎる布陣で、私も光栄です。プチ鹿島さんは、そもそもなぜこの本を著したのですか。
プチ鹿島(以下、鹿島):子供の頃、僕は「川口浩探検隊」が大好きで、実際に多くの人の心をワクワクさせた番組だと思うのですが、一方で「ヤラセ番組」とも言われてきました。
でも、実際に彼らはジャングルに行っているし、その裏にはさまざまなドラマがあったはずで、僕はそれを知りたかったんです。本書にも記していますが、小山さんは「ヤラセ」と言われた「川口浩探検隊」に携わったことについて、今も胸がチクチク傷んでいるそうですね。
小山均(以下、小山):視聴者の中には「川口浩探検隊」を本気で観ている方も多くて、たとえば親族の集まりに行ったときなど「あの番組に出ているのすごいね」なんて言われるので、実際にやっていることのギャップから葛藤することは多かったです。当時は「実はあれは仕込んでいて……」とは言えないですから。
鹿島:関係者の多くは、取材の際に最初は警戒心を持たれて「みんなはどこまで喋ってるの?」と確認してくるケースが多かったです。でも、本書の趣旨が、単に当時のヤラセを告発するとかではないことがわかると、よくぞ聞いてくれたという感じで話してくださいました。
小山さんは、大学や専門学校で講師をする際に、学生たちに「川口浩探検隊」の映像を見せて、その感想を聞いたりしているんですよね。
小山:映像を見せて、どこからがヤラセなのかを説明して、なぜヤラセはいけないのかを考えてもらっています。学生たちの感想レポートを読むと、「ここまで嘘だとは思わなかった」と驚く声がありつつも、
「バラエティ番組だし、誰かを傷つけているわけではないから良いんじゃないか」という声も少なくありません。「これはヤラセだから良くない!」と糾弾するような声はほとんどなくて、ある意味では学生たちは達観しているとも言えます。
2023.05.28 12:00
文・写真・取材=松田広宣
「ヤラセ」の背景にあるリアル
https://realsound.jp/book/2023/05/post-1333015.html
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Source: 芸能トピ