最終回が放映されたのは9月30日のこと。
「最後までひどいストーリーでしたね」
とは、コラムニストの今井舞氏である。
「炎上させるためのエネルギーをたっぷり蓄えてずんと落としていった感じで、ここまで半年間叩いてきた方々もある意味大満足だったのではないでしょうか」
ご存じない方のために説明すると、「ちむどんどん」は沖縄が舞台。黒島結菜演じる主人公、暢子(のぶこ)が料理人を目指して上京し、西洋料理店のシェフ、沖縄料理店の開店を経て故郷で食堂を開く物語だ。
「シナリオ学校なら0点」
しかし、ストーリーや人物造形に疑問が相次ぎ、ネットを中心に“炎上”状態となったのは周知の通り。
最終回は歌手を夢見る暢子の妹が高熱を発し、死線をさまよう場面で始まる。きょうだい一同は海に向かい、彼女の無事を祈るが……。
「その後突如、場面が一気に40年後にワープしたのには腰を抜かしましたね」
と今井氏が続ける。
「で、お婆さんになった妹は元気に過ごしている、となるのですが、そもそも妹が何の病気で、なぜ治ったのかがわからない」
また、ドラマでは親族に借金を繰り返していた主人公の兄も40年後には更生し、借りた金も倍にして返済したとなっていたが、
「その過程を描くのがドラマじゃないですか。この場面に象徴されているように、このドラマは人物の心の機微を一切描かず、重要な部分をすべてナレーションで説明している。シナリオ学校なら0点です」
朝ドラ廃止作戦
「僕も最終回は口が半分開いた状態で見ていました」
とは、同志社女子大学学芸学部メディア創造学科の影山貴彦教授。教授はMBSの元プロデューサーだ。
「だからテレビ愛は人一倍強いんですが、それでもあのストーリーと人物造形には仰天の連続でした。暢子が上京して働き口がなく途方に暮れていると三線が聞こえ、そこに行くと沖縄出身者がいて就職が決まるといったシーンがあるように、このドラマの主人公は何でも偶然が幸運につながる。一方で大事なことは誰にも相談せずに決め、周りを振り回し続ける。これでは共感は呼べません」
ネット上で批判が渦巻いたのも当然なのだが、視聴者をイラつかせたのは、ドラマの中身だけではない。
例えば、9月の記者会見でNHKのメディア総局長は「(批判的なものを含め)ご意見全てがエール」と発言していたが、
「不適切でしたよね」
と影山氏が続ける。
「視聴者にとっては思いを受け止めてもらえず、肩透かしを食った感じがしたのでは。こうした対応がまたネットでの炎上を生み、さらなる騒ぎを招いてしまったような気がします」
最終回後も、プロデューサーが「(ドラマが)皆さまの心のどこかに残ることを願ってます」とコメントを出し、これもまた炎上の“伏線”となる始末……。
これらについてNHKの見解を聞くと、
「お寄せいただいたご意見は、ありがたく受け止めております」
と言うが、
「あらゆる対応も含め、NHKが朝ドラを廃止するための深遠な作戦かと思いました」(今井氏)
そんな“疑惑”さえ生み出した「迷作」ドラマ。
半年間、毎朝視聴者を異世界へとワープさせてくれたことに感謝したい。
「週刊新潮」2022年10月13日号 掲載
https://news.yahoo.co.jp/articles/997a61b0ff508eac6bc92cb06a99b8a6556ad69c
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Source: 芸能トピ