浮かぶのは教養の欠落だが、1バンドの問題で済ませていいのか。何度も繰り返されてきたのが、この種の話だ。知っておくべき教養の欠落を生む背景は何なのか。改めて探った。(山田雄之、西田直晃)
◆「関わった人に世界史を学んだ人はいなかったのか?」
「関わった人に世界史を学んだ人はいなかったのか?」。英BBC放送(電子版)は14日、今回の騒動を報じる際、ネット上のそんな反応を紹介した。
騒動の渦中にある「ミセス」は2013年に結成。
15年にメジャーデビューした。20年7月に活動休止したが、現在の3人体制で22年3月に活動再開。ヒット曲「ケセラセラ」は昨年の日本レコード大賞を受賞し、NHK紅白歌合戦にも出場した。
音楽評論家のスージー鈴木さんは「若い世代だけでなく中年層にも人気。複雑なメロディー構成に、日本人好みのハイトーンボイスが相まって満足度が高い楽曲を作り続けている。J-POPの最先端を走っているバンドの一つだ」と評価する。
◆2000年代以降でコロンブスの評価が変わった
新曲「コロンブス」のMVは12日に公開された。ボーカルの大森元貴さんらメンバー3人がコロンブスやナポレオン、ベートーベンとみられる面々に扮(ふん)し、類人猿と遭遇。類人猿に人力車を引かせたり、乗馬や楽器の演奏方法を教えたりする場面も登場した。
このMVは公開早々に批判が湧き上がり、歴史の研究者も厳しく評した。
世界史の教科書作りに長年携わってきた一橋大の貴堂嘉之教授(米国史)は、コロンブスの評価について「2000年代以降は新大陸にたどり着いた航海者ではなく
植民地支配のきっかけになった人物としての位置付けが強まっている」と述べ「ダーウィンが『進化論』を唱えて以降、猿は『野蛮』や『劣等』なものとして描かれることが定型化している」と解説する。
◆人種差別的表現は明らか…「植民地支配を容認」
その上で「MVはコロンブスら西洋人が文明を教える側、類人猿が教えられる側として描いた。明らかな人種差別的表現で、植民地支配を容認するように受け止められる。
世界基準で判断すれば教養不足と評価されても仕方ない」と語る。
所属レコード会社のユニバーサルミュージックは13日、「歴史や文化的な背景への理解に欠ける表現が含まれていた」として公開を止めた。大森さんも「悲惨な歴史を肯定するものにしたいという意図はありませんでした」
「不快な思いをされた方に深くおわびを申し上げます」とコメントを発表。「類人猿が登場するのは、年代の異なる生命がホームパーティーするイメージだった」と釈明した。
ただ「教養不足」は「ミセス」だけか。公開までに携わった面々はどうか。
◆「細かな確認が不足」世界を狙うアーティストなのに
ユニバーサルミュージックの担当者は「具体的な制作過程は申し上げられないが、今回も公開前に社内でMVをチェックする機会はあった。
細かな確認が不足していた」と述べた。キャンペーンソングとしてタイアップしたコカ・コーラにもメールで取材を申し込んだが、18日午後8時までに回答を得られなかった。
ジャーナリストの津田大介さんは一連の過程に疑問を呈し「海外展開を狙っているアーティストにもかかわらず、スタッフたちは世界基準を把握できていなかった。
日本の教養の現在地を示している」と断じる。
続きは東京新聞 2024年6月19日 12時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/334434
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Source: 芸能トピ